火力発電所がなくなっていく近未来
2021年10月2日 よしなしごと9月30日に東京ガスがコンバインドサイクルLNG発電所である「横須賀パワーステーション」を売却するという報道がありました。同発電所はガスタービン1台の2軸型(ガスタービン発電機とスチームタービン発電機の2台で一組)、出力23万9700kW、効率51.0%(LHV)のコンバインドサイクル発電所であり、やや旧型で効率が低いものの普通に考えるとこれからしばらくの電源不足時代には十分活躍しそうなのですが、やはり世界的な流れで、ガス会社としてもCO2発生源となる設備を減らしておきたい、ネットゼロカーボンへ向けて、燃料変更に対する改造や高い燃料の使用を回避したい、燃料高騰時における逆ザヤ(スポット価格の上限以上のコストがかかると燃料費を回収できない)回避など、様々な思惑があるのでしょう。
ただ、この型式のコンバインドサイクルは(設計がそうなっていれば)ガスタービン+発電機だけ(いわゆるOCGT)で運転でき、効率は更に下がるものの高速起動可能なので、今後の調整力として価値が高いはずです。再エネを大量導入するためには、再エネが発電しないときの予備力と、変動に対する調整力としての火力発電が経済的にも技術的にも必須であり価値が高いのですが、この方面に明るくない人は火力発電は再エネ普及と相容れないものと認識しているようで、もう少し勉強してほしいものだと感じます。
先日の某総裁選挙の結果ではエネルギー業界にとって最悪のシナリオはとりあえず回避されましたが、またエネルギーの根本を理解していない大臣がでてくる可能性も捨てきれず、常にリスクに晒されている日本のエネルギー業界は更にリスクオフを指向するものと思われます。というのも、完全に自由化された現在の電気事業では誰にも停電回避の責任がないため、かつて最大のリスクであった停電は今やリスクでも何でもなく、今や会社経営上の損失が最大のリスクなので、当然ながらリスク資産は処分しておくのが最善の経営方針になっているのです。それは人件費も同じです。優秀な技術者を雇っておき細心の注意払って停電回避をするよりも、業務はすべて下請けに出し人件費を極限まで削減するのが経営的に最も優れた道なのですから。
日本の経済にとって、当面は今冬の東日本の計画停電を回避できるかどうかが最大の関心事でしょうか。停電は社会に甚大な影響を与えますが、もはやその責任を負うものは不在というのが日本社会の姿であって、それはとても不気味なことです。
(11,938)
ただ、この型式のコンバインドサイクルは(設計がそうなっていれば)ガスタービン+発電機だけ(いわゆるOCGT)で運転でき、効率は更に下がるものの高速起動可能なので、今後の調整力として価値が高いはずです。再エネを大量導入するためには、再エネが発電しないときの予備力と、変動に対する調整力としての火力発電が経済的にも技術的にも必須であり価値が高いのですが、この方面に明るくない人は火力発電は再エネ普及と相容れないものと認識しているようで、もう少し勉強してほしいものだと感じます。
先日の某総裁選挙の結果ではエネルギー業界にとって最悪のシナリオはとりあえず回避されましたが、またエネルギーの根本を理解していない大臣がでてくる可能性も捨てきれず、常にリスクに晒されている日本のエネルギー業界は更にリスクオフを指向するものと思われます。というのも、完全に自由化された現在の電気事業では誰にも停電回避の責任がないため、かつて最大のリスクであった停電は今やリスクでも何でもなく、今や会社経営上の損失が最大のリスクなので、当然ながらリスク資産は処分しておくのが最善の経営方針になっているのです。それは人件費も同じです。優秀な技術者を雇っておき細心の注意払って停電回避をするよりも、業務はすべて下請けに出し人件費を極限まで削減するのが経営的に最も優れた道なのですから。
日本の経済にとって、当面は今冬の東日本の計画停電を回避できるかどうかが最大の関心事でしょうか。停電は社会に甚大な影響を与えますが、もはやその責任を負うものは不在というのが日本社会の姿であって、それはとても不気味なことです。
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